もし、自分の家に見たこともない人が居着いてしまったらどうするか。相手には縁もゆかりない。訪問も突然だ。こちらには誰かを養うだけのよゆうはない。申し訳ないが当然、お引き取りを願うだろう。こういう相手も住ませてやって、食事の面倒までみてやっているのが千年の森の杉だ。ちゃっかり居候をきめこむのはヤマグルマという木である。 だが本来、ヤマグルマは締め枯らし植物ではない。この森以外では林床で芽生え、独立した木として成長する。千年の森の杉はよほど居心地がいいのだろう。 |
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誰もがそのルールを静かに守っている。だからこそ、毎年の実りと成長がある。雨がやんだら、この森の天空にもきっと小さな虹がかかるだろう。地上の大きな森と空中の小さな森。そのすべての中に生命があふれている。大きな森の中ではぼくもたくさんの生命の中のひとつにすぎない。 《文.蟹江節子》 |
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